RX66T、RX72T について
- RX66T は最大 160MHz
- RX72T は最大 200MHz
- 共に RXv3 コア(DFPU は内蔵しない)
同じ RXv3 コアの RX72N、RX72M などは最大 240MHz 動作となっている。
- RX66T、RX72T は、主にモーター制御などに特化したデバイスで、高クロックで MTU、GPTW などのタイマーを駆動出来る。
- また、タイマー出力を微妙に遅延させて、より細かい PWM 波形を作る事が出来る機能を内蔵する。
- CAN を内蔵する事から、ハイブリッドや電気自動車のコントローラーとして需要が大きいのかもしれない。
RX66T は RXv3 コアとして初めての製品なので、160MHz と言う能力は何となく判るが、同時期に出た RX72T の 200MHz は何故なのか疑問を持っていた。
モーター制御としては、下位に RX24T(80MHz) などがあり、それに比べて能力が格段に上がっている。
周波数が高ければ、1個のデバイスで複数のモーターを同時にケア出来る。
普通に考えて、RXv3 コアは共通なのだから、RX66T や RX72T 用に専用のコアを設計する事は考えにくい。
RX66T は、RX72T の選別漏れでは無いかと思っている。(周波数以外は機能は同じ)
多分中身のコアベースは、RX72N と遜色無いのだろうと思える。
ただ、動作周波数が最大 120MHz のRX66N(RX72N の低速版)があり、RX72N として作ったが、選別で落ちて、低速版として再利用しているのは考えられるので、一概に、動作周波数を制限しているのかは、何とも言えない部分でもある。
オーバークロックしてみる
自分の C++ フレームワークでは、クロック設定は、「clock_profile.hpp」に、希望のクロックテーブルを実装すれば、自動で設定されるようにしてある。
SCI、CAN、I2C、タイマーの周期なども、各クラスが、「clock_profile」の設定を継承して、各クラス内で自動で計算するので、気にする必要は無いよう工夫されている。
そこで、まず、RX66T をオーバークロックしてみた。
少しづつ上げて、レイトレースプログラムで実験してみた(浮動小数点などの計算がかなり含まれる)。
結果から言うと、普通に 240MHz で動作するようだー
namespace device {
//+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++//
/*!
@brief クロック・プロファイル・クラス @n
・分周器の仕様を超える値を指定しない事 @n
・PLL_BASE は、0.5 倍単位 @n
・他は、PLL_BASE を基数とする整数除算値 @n
・詳細はハードウェアーマニュアル参照の事
*/
//+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++//
class clock_profile {
public:
#if defined(USE_USB)
static constexpr bool TURN_USB = true; ///< USB を使う場合「true」
static constexpr uint32_t BASE = 12'000'000; ///< 外部接続クリスタル
static constexpr uint32_t PLL_BASE = 144'000'000; ///< PLL ベースクロック(最大160MHz)
static constexpr uint32_t ICLK = 144'000'000; ///< ICLK 周波数(最大160MHz)
static constexpr uint32_t PCLKA = 72'000'000; ///< PCLKA 周波数(最大120MHz)
static constexpr uint32_t PCLKB = 36'000'000; ///< PCLKB 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t PCLKC = 144'000'000; ///< PCLKC 周波数(最大160MHz)
static constexpr uint32_t PCLKD = 36'000'000; ///< PCLKD 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t FCLK = 36'000'000; ///< FCLK 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t BCLK = 36'000'000; ///< BCLK 周波数(最大60MHz)
#else
static constexpr bool TURN_USB = false; ///< USB を使う場合「true」
static constexpr uint32_t BASE = 10'000'000; ///< 外部接続クリスタル
#if 0
static constexpr uint32_t PLL_BASE = 160'000'000; ///< PLL ベースクロック(最大160MHz)
static constexpr uint32_t ICLK = 160'000'000; ///< ICLK 周波数(最大160MHz)
static constexpr uint32_t PCLKA = 80'000'000; ///< PCLKA 周波数(最大120MHz)
static constexpr uint32_t PCLKB = 40'000'000; ///< PCLKB 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t PCLKC = 160'000'000; ///< PCLKC 周波数(最大160MHz)
static constexpr uint32_t PCLKD = 40'000'000; ///< PCLKD 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t FCLK = 40'000'000; ///< FCLK 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t BCLK = 40'000'000; ///< BCLK 周波数(最大60MHz)
#else
// Over clock... 動く、動くぞ・・・
static constexpr uint32_t PLL_BASE = 240'000'000; ///< PLL ベースクロック(最大160MHz)
static constexpr uint32_t ICLK = 240'000'000; ///< ICLK 周波数(最大160MHz)
static constexpr uint32_t PCLKA = 120'000'000; ///< PCLKA 周波数(最大120MHz)
static constexpr uint32_t PCLKB = 60'000'000; ///< PCLKB 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t PCLKC = 120'000'000; ///< PCLKC 周波数(最大160MHz)
static constexpr uint32_t PCLKD = 60'000'000; ///< PCLKD 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t FCLK = 60'000'000; ///< FCLK 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t BCLK = 60'000'000; ///< BCLK 周波数(最大60MHz)
#endif
#endif
};
}
RX66T Start for Ray Trace: 320, 240
# Render time: 371ms (1)
続いて、RX72T、こちらも、問題無く動くw
namespace device {
//+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++//
/*!
@brief クロック・プロファイル・クラス @n
・分周器の仕様を超える値を指定しない事 @n
・PLL_BASE は、0.5 倍単位 @n
・他は、PLL_BASE を基数とする整数除算値 @n
・詳細はハードウェアーマニュアル参照の事
*/
//+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++//
class clock_profile {
public:
#if 0
#ifdef USE_USB
static constexpr bool TURN_USB = true; ///< USB を使う場合「true」
static constexpr uint32_t BASE = 16'000'000; ///< 外部接続クリスタル
static constexpr uint32_t PLL_BASE = 192'000'000; ///< PLL ベースクロック(最大200MHz)
static constexpr uint32_t ICLK = 192'000'000; ///< ICLK 周波数(最大200MHz)
static constexpr uint32_t PCLKA = 96'000'000; ///< PCLKA 周波数(最大120MHz)
static constexpr uint32_t PCLKB = 48'000'000; ///< PCLKB 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t PCLKC = 192'000'000; ///< PCLKC 周波数(最大200MHz)
static constexpr uint32_t PCLKD = 48'000'000; ///< PCLKD 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t FCLK = 48'000'000; ///< FCLK 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t BCLK = 48'000'000; ///< BCLK 周波数(最大60MHz)
#else
static constexpr bool TURN_USB = false; ///< USB を利用しない場合「false」
static constexpr uint32_t BASE = 16'000'000; ///< 外部接続クリスタル
static constexpr uint32_t PLL_BASE = 200'000'000; ///< PLL ベースクロック
static constexpr uint32_t ICLK = 200'000'000; ///< ICLK 周波数
static constexpr uint32_t PCLKA = 100'000'000; ///< PCLKA 周波数
static constexpr uint32_t PCLKB = 50'000'000; ///< PCLKB 周波数
static constexpr uint32_t PCLKC = 200'000'000; ///< PCLKC 周波数
static constexpr uint32_t PCLKD = 50'000'000; ///< PCLKD 周波数
static constexpr uint32_t FCLK = 50'000'000; ///< FCLK 周波数
static constexpr uint32_t BCLK = 50'000'000; ///< BCLK 周波数
#endif
#else
static constexpr bool TURN_USB = true; ///< USB を使う場合「true」
static constexpr uint32_t BASE = 16'000'000; ///< 外部接続クリスタル
static constexpr uint32_t PLL_BASE = 240'000'000; ///< PLL ベースクロック(最大200MHz)
static constexpr uint32_t ICLK = 240'000'000; ///< ICLK 周波数(最大200MHz)
static constexpr uint32_t PCLKA = 120'000'000; ///< PCLKA 周波数(最大120MHz)
static constexpr uint32_t PCLKB = 60'000'000; ///< PCLKB 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t PCLKC = 240'000'000; ///< PCLKC 周波数(最大200MHz)
static constexpr uint32_t PCLKD = 60'000'000; ///< PCLKD 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t FCLK = 60'000'000; ///< FCLK 周波数(最大60MHz)
static constexpr uint32_t BCLK = 60'000'000; ///< BCLK 周波数(最大60MHz)
#endif
};
}
RX72T Start for Ray Trace: 320, 240
# Render time: 371ms (1)
実用になるのか?
スペックを超えて動作させるのは、現場では決して行わないが、アマチュアの遊びとしては、それなりに面白い。
現在、デバイスの入手性が極めて悪く、RX72T、RX72N、RX72M などはほぼ入手が出来ない状況となっている。
RX66T については、多少割高だが入手出来るようだ。(自分が買った時の倍近い)
※RX66T と RX72T は値段の差が少ないので(以前、潤沢にデバイスが買えた時期には、逆転現象もあった)、RX72T 一択となるだろうと思える。
まだ、タイマーなど、高クロックで駆動するペリフェラルを評価していないので何とも言えない部分もあるし、連続で動かしている時に停止するとか、色々なアクシデントはあるかもしれないが、とりあえず、動作は確認出来た。
周波数を制限する要因が何なのか、想像でしか無い為、非常にグレーな部分が多いものの、240MHz で動くなら、色々と有利な面も多い。
最近の半導体は、昔に比べて、マージンが大きいし、基本的なスペックは、元々の能力では無く、営業的な側面から決められている事も考えると、動いて当たり前なのかもしれない。
自分としては、低価格で購入でき、高性能な RXxxT シリーズは前から好きなので、これからもこのシリーズには注力したいと思う。
それにしても半導体不足はいつまで続くのか・・・