RX72N Envision Kit で搭載された D2 オーディオ
RX72N Envision Kit には、デジタルオーディオ再生のデバイスが搭載されている。
現ルネサス製(インターシル)の D2-41051 で、I2S などのデジタル入力を内蔵 DSP などで処理して、最終的に PWM 出力する。
最初、このデバイス用のドライバーを書く必要があると思い、マニュアルをダウンロードして、初期化を実装する準備をしていた。
しかし、RX72N Envision Kit ユーザーズマニュアルがアップロードされ、中を読むと、
5.15.5 DAE-4 設定について
本ボードは既に I2S 経由で入力された PCM 音源を出力できる様に設定されています。
と書かれており、直ぐに使える事が判った。
※IPL 用 EEPROM が載っており、リセット時、初期化を行うようだ。
SSIE のドライバーを実装
RX72N には、I2S 通信用に SSIE インターフェースが載っている。
又、オーディオクロックとして、24.576MHz の発信器が載っている。
※この周波数は、48KHz のサンプリングに適した周波数となっている。
※ 24.576 MHz / (32 + 32) / 8 ---> 48KHz
また、内蔵クロックジェネレータが、PLL 方式で、周波数をプログラム出来るので、44.1KHz 用も出ると思ったが、48KHz のみのようだ。
なので、44.1KHz などの CD 音源の再生では、アップサンプリングして変換する必要がある。
厳密に行うのは、色々と面倒そうなので、簡易な方法で凌いでいる、そのうちより厳密な方法を行いたい。
※RX 内臓 DSP 命令を使う時が来たかもしれないw
最初「PCM」とあったので、16 ビットで出力していたが、アナログ出力は変化が無かった、色々調べて、24 ビットにしたら、出力される事が判った。
※現在の実装では 32 ビットにしている。(MSB ファーストなので、問題無いハズ)
最初、テストで「ノコギリ波」を出力していたが、出力波形が、思ったように出ない・・・
良く考えたら D2 デバイス内部で、FIR フィルタなどを通っているので、スパイク上の波形変化では、高い周波数成分が乗り、そのようになるだろう事が判った。
サイン波で実験したら、思ったようなアナログ出力が得られた。
オーディオ出力
RX72N Envision Kit には、PWM からアナログに変換するフィルタ回路がオペアンプで実装されている。
マニュアルには、
5.15.1 接続できるスピーカについて 接続できるスピーカについて
音声出力ジャックにはアンプ付きのスピーカを接続出来ます。アンプがない場合は 8Ωのスピーカも接続でき
ますが、イヤホン等インピーダンスの高い物は接続できません。
と書かれているが、意味が良く判らない、オペアンプは、かなり電流を流せるもののようだが、8オームをドライブできて、16や32オームをドライブ出来ないとは???
また、オペアンプには出力に100オームの制限抵抗があるので、なおさらだ・・・
実験的に、10オームくらいの抵抗を繋いでみたが、思った通り振幅が非常に小さくなる。
※少し怖いので、イヤホンは繋いでいない。
RCA 入力のアンプを接続して、普通に音が鳴っている。
※「D2-41051」には、複数の PWM チャネルがあるので、ランドに出しておいて欲しかった・・・
RX65N のコードを移植
RX65N Envision Kit で D/A 出力していた部分を、SSIE にするコードを追加して、音を聴いてみた。
厳密なヒアリングを行っていないが、普通に聞こえる。(12ビットD/Aより良いか、悪いか、何とも言えない)
コード中では、
#define USE_DAC
と
#define USE_SSIE
で切り替えるようにしている。
DAC 用には、
volatile uint32_t wpos_;
/// DMAC 終了割り込み
class dmac_term_task {
public:
void operator() () {
device::DMAC0::DMCNT.DTE = 1; // DMA を再スタート
wpos_ = 0;
}
};
typedef device::dmac_mgr<device::DMAC0, dmac_term_task> DMAC_MGR;
DMAC_MGR dmac_mgr_;
uint32_t get_wave_pos_() { return (dmac_mgr_.get_count() & 0x3ff) ^ 0x3ff; }
typedef device::R12DA DAC;
typedef device::dac_out<DAC> DAC_OUT;
DAC_OUT dac_out_;
typedef utils::sound_out<1024, 512> SOUND_OUT;
SOUND_OUT sound_out_;
class tpu_task {
public:
void operator() () {
uint32_t tmp = wpos_;
++wpos_;
if((tmp ^ wpos_) & 64) {
sound_out_.service(64);
}
}
};
typedef device::tpu_io<device::TPU0, tpu_task> TPU0;
TPU0 tpu0_;
void start_audio_()
{
{ // 内臓12ビット D/A の設定
bool amp_ena = true;
dac_out_.start(DAC_OUT::output::CH0_CH1, amp_ena);
dac_out_.out0(0x8000);
dac_out_.out1(0x8000);
}
{ // サウンドストリーム DMAC マネージャー開始
uint8_t intr_level = 4;
bool cpu_intr = true;
auto ret = dmac_mgr_.start(tpu0_.get_intr_vec(), DMAC_MGR::trans_type::SP_DN_32,
reinterpret_cast<uint32_t>(sound_out_.get_wave()), DAC::DADR0.address(),
sound_out_.size(), intr_level, cpu_intr);
if(!ret) {
utils::format("DMAC Not start...\n");
}
}
// 波形メモリーの無音状態初期化
sound_out_.mute();
}
SSIE 用には
SSIE_IO ssie_io_;
SSIE_IO::SOUND_OUT& sound_out_ = ssie_io_.at_sound_out();
void start_audio_()
{
{ // SSIE 設定 RX72N Envision kit では、I2S, 48KHz, 32/24 ビットフォーマット
uint8_t intr = 5;
uint8_t adiv = 24'576'000 / 48'000 / (32 + 32);
auto ret = ssie_io_.start(adiv,
utils::ssie_t::FORM::I2S,
utils::ssie_t::D_NUM::_32, utils::ssie_t::S_NUM::_32, intr);
/// utils::ssie_core::D_NUM::_24, utils::ssie_core::S_NUM::_32, intr);
if(ret) {
ssie_io_.enable_mute(false);
ssie_io_.enable_send(); // 送信開始
uint32_t bclk = 24'576'000 / static_cast<uint32_t>(adiv);
utils::format("SSIE Start: BCLK: %u Hz\n") % bclk;
} else {
utils::format("SSIE No start...\n");
}
}
}
となっている。
発音は、sound_out オブジェクト(クラス)に対して行うので、シンプルとなる。
ssie_io クラス内で、sound_out クラスを持っていて、操作は、それを経由している、なので、外部に、sound_out オブジェクトの参照を出してある。
このような場合 C++ は本当に便利だ。
NESEMU_sample(ファミコン・エミュレータ)
RX65N、RX72N で共有のソースとした。
各ディレクトリに移動して「make」すればビルド出来る。
※まだ、RX72N Envision Kit の入手性が悪いが、ビルドしたバイナリーを置いてある。
操作には、ファミコン互換パッドが必要だ。
※近々に USB ジョイパッドに対応する予定でいる。
他に、SIDE_sample も動作を確認した(スペースインベーダーエミュレータ)
github のソースをクローンしている場合
RX72N の追加で、ソースコードは、非常に短いスパンで更新されている。
なので、ソースコードを利用している人は、アーカイブをダウンロードせず、git の操作で更新をした方が有益だと思う。