少し間が空いたけど、またまたRXマイコン関連ですー
日本の組み込み(趣味)マイコンでは、まだ「C」が主流で、「C++」の情報が少ないように感じる。
デバイスドライバーもCで書かれたものが殆どで、C++で書かれた物が少ない(日本国内では観た事が無い)
※たとえば、複数チャネルを備えたUARTなど、テンプレートクラスを使えば、拡張性のあるコードがシンプルに書けると思う。
Windows などのアプリケーションプログラマーは別だが、組み込み系プログラマーは、まだC++に対して、「負」の感情を持っているのだろうか?
最近AVRでプログラムする機会があり、C++が実用レベルで扱える事を知ったー
又、arduino を触る機会があり、そのコードはC++が中心である事も知った。
ARM系、海外の組み込みプログラムでは、C++が普通に使われている、何故日本は未だにCなのだろうか?
さて、RXマイコンの開発環境なのだがー、C++でプログラムする場合に必要な事を考えてみたい。
AVRではメモリーの制限からSTLを扱う事が困難だ、RXマイコンなら全てのデバイスでは無理だけど、少なくともRX621など、RAMもROMもある程度豊富にあればSTLも怖くないと思われる。
以前にSH2AでSTLが正しく動作しなかったのだが、それは、静的な初期化関数のコンストラクターが正しく呼ばれていない事に起因するようだった。
ARMの gcc などの情報から、「.ctors」セクションに初期化が必要な関数のコンストラクターテーブルが格納される事は判ったので、リンカースクリプトに.ctorsセクションのロード命令を記述して、簡単なコードを書き、アセンブルリストを観て確認してみた。
typedef unsigned int uint32;
class func {
uint32 count_;
public:
func() : count_(0) { }
void service() { ++count_; }
uint32 get() const { return count_; }
void set(uint32 v) { count_ = v; }
};
func func_;
↑たとえば、こんなクラスを宣言して、静的なクラスを配置する、「func_」は、main 関数が実行される以前にコンストラクターが呼ばれなければならない。
※funcクラスでは、コンストラクターで、count_を0で初期化している。
リンカースクリプトに、以下のように書いたが、mapファイルを観ても、.ctorsのサイズは0となっている・・・
.ctors :
{
KEEP (*(SORT(.ctors.*)))
KEEP (*(.ctors))
}
最適化を0にして、アセンブラリストを確認すると、初期化関数自体はあるが、当然呼ばれていない・・・
fff80b31 <__GLOBAL__sub_I_func_>:
fff80b31: 7e a6 push.l r6
fff80b33: ef 06 mov.l r0, r6
fff80b35: 66 11 mov.l #1, r1
fff80b37: fb 2e ff ff 00 mov.l #0xffff, r2
fff80b3c: 39 c7 ff bsr.w fff80b03 <__Z41__static_initialization_and_destruction_0ii>
fff80b3f: 3f 66 01 rtsd #4, r6-r6
そこで、C++の標準的リンカースクリプトを参考にしてみたー「/usr/tkdn-20110720/rx-elf/rx-elf/lib/rx.ld」
そして、判ったー、最近の gcc では、別のセクションに格納されているようだー、これは、4.6 くらいからそうなったようだー
PROVIDE (__preinit_array_start = .);
KEEP (*(.preinit_array))
PROVIDE (__preinit_array_end = .);
PROVIDE (__init_array_start = .);
KEEP (*(SORT(.init_array.*)))
KEEP (*(.init_array))
PROVIDE (__init_array_end = .);
PROVIDE (__fini_array_start = .);
KEEP (*(.fini_array))
KEEP (*(SORT(.fini_array.*)))
PROVIDE (__fini_array_end = .);
※ちなみに簡単に説明すると、「.preinit_array、.init_array」セクションが、コンストラクターの開始アドレステーブルが格納されるセクションであり、「.fini_array」はデストラクターの開始テーブルが格納されるセクションとなっているようだー
又、「KEEP」は、重要なキーワードで、最適化された場合、どこからも参照されないアドレステーブルは、削除される為、それが起こらないようにするものだ。
「__GLOBAL__sub_I_func_」は、「__Z41__static_initialization_and_destruction_0ii」を呼んでいるのだが、コンストラクターとデストラクターが共通になっており、引数を使って呼び分けているようだ。
初期化コードはこんな感じ~
int main(int argc, char**argv);
extern int sbss;
extern int ebss;
extern int idata;
extern int sdata;
extern int edata;
extern int _preinit_array_start;
extern int _preinit_array_end;
extern int _init_array_start;
extern int _init_array_end;
int init(void)
{
// R/W-data セクションのコピー
{
int *src = &idata;
int *dst = &sdata;
while(dst < &edata) {
*dst++ = *src++;
}
}
// bss セクションのクリア
{
int *dst = &sbss;
while(dst < &ebss) {
*dst++ = 0;
}
}
// 静的コンストラクターの実行(C++ )
{
int *p = &_preinit_array_start;
while(p < &_preinit_array_end) {
void (*prog)(void) = (void *)*p++;
(*prog)();
}
}
{
int *p = &_init_array_start;
while(p < &_init_array_end) {
void (*prog)(void) = (void *)*p++;
(*prog)();
}
}
// main の起動
int argc = 0;
char **argv = 0;
int ret = main(argc, argv);
return ret;
}
C++ テスト・コード
※今後 rx.ld を解析して、自分のシステムに合った物に修正する必要がある、リンカースクリプトにはまだまだ不明な事が多い・・・
とりあえず今回はここまで。